乳歯が早めに抜けてしまったら?
むし歯やケガなどで早期に乳歯を抜かなければならないことがあります。
さて、
なんとか頑張って抜歯ができました。
「その後の治療って、必要なのでしょうか?」
大人の歯、永久歯は、抜歯した後に再び噛めるようにする治療が必要ですよね。
入れ歯やブリッジ、インプラントなどです。
それでは、
乳歯は抜いた後、どうすると思いますか?
たいてい、乳歯は永久歯への生えかわりのタイミングで自然に抜けます。
お家でうまく抜けない子は歯医者で抜くこともありますが、
そもそもそれは、歯ならびの成長にとって適切な生えかわりの時期があるからです。
乳歯が抜けるのは遅すぎても早すぎてもダメなのです。
遅すぎる場合とは、永久歯が生えてきているのにも関わらず、
そこの乳歯がグラグラせずに残ってしまっている時などです。
定期的に歯科検診で受診していれば、
「この乳歯は自然に抜けるのが遅いので、今度抜歯をしましょう」
と歯科医師から言われるかもしれません。
その時は頑張って抜歯をしましょう。
それでは、乳歯が抜けるのが早すぎる場合とはどんな時でしょうか?
それは、むし歯やケガなどで抜けてしまった、もしくは抜かなければならなくなった時です。
その時は、歯科医院で乳歯を抜歯します。
しかし、いずれ永久歯が生えてくるので、
大人のようにインプラントをしたりということは必要ありません。
その代わり、永久歯が生えてくるスペースを確保しておかなければならないのです。
このことを、保隙(ほげき)といいます。
どういうことかというと、
早くに抜けてしまった乳歯の隣の歯が、その抜けたスペースによってきてしまうのです。
つまりそれを防いでおかないと、
あとから生えてこようとしている永久歯が生えるスペースがなくなり、適切な位置に生えてこれなくなってしまう
↓
永久歯の歯ならびがわるくなる
ということです。
では、実際にどのようにそのスペースを確保しておくのか、
治療の例を見てみましょう。
7歳のお子さんです。
乳歯が早期にグラグラしてしまい、痛みがあるため抜歯が必要でした。
原因は、当時のむし歯の治療で歯が脆くなってしまい、外力がかかった際に歯が内部で折れてしまっていたのです。
抜歯は済みましたが、永久歯が生えてくるまであと1年以上はかかりそうでした。
その間に隣の乳歯がこのスペースによってきてしまうと、本来生えてくるはずの永久歯が適切な位置に生えてこれなくなってしまいます。
そのことを防ぐために必要な治療が、保隙です。
今回は、バンドループという装置を用いて保隙しました。
型を取り、確保しておきたいスペースにぴったりのワイヤーを作製し、隣の乳歯に接着します。
そうして1年が経過した頃、保隙していた部分に変化が現れます。
歯ぐきが少し膨らんできているのです。
レントゲンを撮ってみると、永久歯がもうすぐ生えてきそうなのがわかります。
白く見えているのはバンドループです。
このままだとワイヤーが永久歯が生えてくる際に邪魔になってしまうため、バンドループを除去します。
バンドループをとって1ヶ月程たった頃、永久歯が生えてきました。
ここまできたら、あとは通常の永久歯の生えかわりと同様です。
しっかり生えてくるか様子を見守ります。
いかがでしたか?
今日は、早期に乳歯を失った場合の治療についてお話ししてきました。
この患者さんは矯正(きょうせい)治療、いわゆる理想的な歯ならびのために積極的に動かす治療はせず、
あくまで自然な生えかわりに影響が出ないように、という目的で治療を進めています。
今後、他の歯の生えかわりなどで今回治療した部分の歯ならびがきれいにならない可能性はあります。
もし、生えかわりを含めて永久歯をきれいな歯ならびに導くことを目的とするならば、
この時点で他の装置を用いて矯正治療を進めることも可能です。
受診される患者さんが希望される治療は、さまざまです。
それぞれに合った治療法をご提案したいので、
気になること、聞いてみたいことがある方はぜひ一度ご相談ください。
治療期間 | 1年半 |
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治療費 | 保険診療 |
治療のリスク | 今後、歯ならびが変化する可能性がある |